話題沸騰中の『ふゆくる』についてシリーズを通してシナリオを手掛けるキーマン・渡辺僚一氏に直撃!!
すみっこソフトが展開していた名作“SF四季シリーズ”の最新作がシルキーズプラスから登場!! 日常系に見えてハードなSF要素が魅力の本シリーズは、シナリオを中心に評価が高く、萌えゲーアワードのシナリオ賞などを受賞してきたのだ。最新作では不死の少女たちによる独特の生死観を持った世界で、ミステリー調の物語が描かれていくぞ。現在発売中のBugBug6月号では、そんな話大作の開発の経緯やミステリー色の強い今回の設定について、シリーズ全作品でシナリオを手掛ける渡辺僚一氏に直撃!! カラー4ページでたっぷり聞いた内容を、今回はダイジェストで紹介していくぞ。
▲インタビューに答えてくれた渡辺僚一氏。シルキーズプラスでは『缶詰少女ノ終末世界』を手掛けて話題になったのだ
構想自体は『はるまでくるる。』を書き終えてすぐくらいには既に存在
──前作『あきゆめくくる』の発売が5年前ですが、構想はどのくらい前からされていたのでしょうか? 本作の制作に至った経緯を教えて下さい。
渡辺:5年!! もうそんな前になるのか!! ギャー(笑)!!
──前作が2016年の年末ですから、大体5年ですね(笑)。
渡辺:『ふゆまで、くるる。』の構想は3個ありました。『あきゆめくくる』が終わった直後に考えていたのは、「4次元能力を使えるキャラクターたちのバトルもの」と「深い雪に埋まった巨大な建築物で何百体もの小さな兵隊人形を操って戦う話」でした。すぐに製作に取り掛かっていたら、このどちらかを書いていたんじゃないかと思います。
──なるほど。それらの内容も見てみたい気がします。
渡辺:4次元ものは地面に落ちた桜の花弁が空に向かって舞い上がっていく、という映像がビシッと頭の中にあるので、いつか形にしたなーと思います。兵隊人形の話は万城目学の『鴨川ホルモー』みたいな感じになりそうなので作らないと思います。で、今回作ることになったのは『はるまで、くるる。』と『なつくもゆるる』の間に思いついたけど、タイミングが悪くて形にならなかった作品です。
──構想自体はかなり早くからあったんですね。
渡辺:構想自体は『はるまで、くるる。』を書き終えてすぐくらいにあった、ということになります。数年たってから某社で小説として出しませんかという話になったんですが、書いてみたら…「おぅ!! これはどう考えても『ふゆから、くるる。』じゃないの!!」と。オレが『ふゆから、くるる。』だ!! と叫び始めたんです。「これ以外に『ふゆから、くるる。』はねーよ」と思ってしまったので、編集さんに頭を下げて小説ではなくシナリオにすることにしました。
▲BugBug6月号では『ふゆから、くるる。』を巻中でカラー6ページで大特集。インタビューは後半の4ページを費やして掲載しているのだ
“SF四季シリーズ”のコンセプトとは?
──シリーズとしては5年ぶりということで、今作から触れるというユーザーもいるかと思いますが、シリーズのコンセプトなどを改めてお聞かせ頂けますか?
渡辺:『はるまで、くるる。』『なつくもゆるる』『あきゆめくくる』ときて今回の『ふゆから、くるる。』ですが、それぞれ話は完全に独立していて、繋がりもまったくないので、どこからプレイしていただいても大丈夫です!! 『はる』はハーレム、『なつ』はロリ、『あき』はラブコメとなっていますので、好きなところから。…異形のハーレムであり、異端のロリで、異質なラブコメではありますけど。
──そういう意味では一見バラバラに見えますよね。
渡辺:んじゃ、どこらへんがシリーズなんだよ!! というと、縛りがあるところなんです。「閉鎖空間を舞台にしたループ物である」「ループ現象にSF的な説明をする」この二つの要素が必ず入ってます。だけど、それぞれループの種類は違います。『はる』は、三ヶ月でリセットされるループ。『なつ』は、情報で状況が変化していくループ。『あき』は、キャラクターはループしないけど環境だけがループ。ということになってます。いろんなループ物を考えるぜ!! というループ四季作といってもいいかもしれません。
──なるほど。
渡辺:あと「殺人鬼が登場する」と「アナルで感じるキャラがいる」という縛りもあります。死の要素を入れたいので殺人鬼はわかるんだけど、なんで毎回アナル弱者が出てくるのか自分でもよくわかりません。ループが好きで、SFが好きで、殺人鬼が好きで、アナルの弱い女の子が好きな人は是非!!
▲ストーリーの冒頭部分を紹介。このユルい雰囲気ながらもミステリーだったり哲学だったりするのが“SF四季シリーズ”の魅力なのだ
最新作『ふゆくる』のあらすじとテーマ
──ありがとうございます。そんな本作のあらすじについて、簡単な説明をお願いできますか?
渡辺:死なない少女達が集められた学園で殺人事件が発生します。親友の霜雪しほんを殺された、空丘夕陽が事件を解決するために名探偵をすることになる、というお話です。
──簡単に死んだり生き返ったりする独特の生死観がある世界のお話かと思いますが、舞台設定の特徴、またそれを使って描きたいことはどういった点でしょうか?
渡辺:学園に集められた少女達は、大人になるまで成長すると少女になっていく幼化をして、また大人になってまた少女になり、卒業の日までそれを繰り返します。
──今回のループ要素ですね。
渡辺:そんな終わらない世界が、殺人事件をきっかけに壊れていく。少女達の死が世界の終わりと新たな希望に繋がっていく、という話です。セカイ系なんて言葉もありますが、世界がどうなるか? というよりも世界とは何なのか? 世界という言葉が意味する枠とは何なのか? どこまでが世界なのか? というのがテーマです。
▲特集記事中には過去のシリーズ作品を紹介したカコミも。こちらは記念すべきシリーズ第一作目となった『はるまで、くるる。』
“SF四季シリーズ”は常に終わる世界への挑戦
──ホラーっぽい雰囲気もありますが、いわゆるグロ描写的なものは入ってくるのでしょうか?
渡辺:苦手な人はご安心召され、グロ絵はないです!! 文章の方では少しだけあります。殺人事件のお話なので多少は…。という感じです。恋人の内臓の海で泳ぐとか、内臓の色の違いを丁寧に説明していくとか、そういうグロ猟奇はないです。頭部を切り落とされた死体が出てくるくらいです。
──四季シリーズの「冬」担当の作品になりますが、冬ならではの表現やテーマはありますか?
渡辺:冬は死の季節です。僕は北海道の田舎出身なので冬のやばさは理解してます。生き物を殺しに来る季節ですからね、冬は。死を描く物語なら季節は冬しかない!! と思ったわけです。
──なるほど。このようなお話にしようと思ったきっかけなどはありますか?
渡辺:いつになるかわからないけど、世界は確実に壊れるわけです。間違いなく。地球上で発生した動物は間違いなくいつか絶滅するわけで、人類だっていつかはそうなるわけです。人類が踏ん張ったところで地球の上にいる限り絶滅します。なぜならいつの日か間違いなく太陽のハビタブルゾーン(生命居住可能領域)から外れてしまうからです。もし宇宙に逃げ出すのに成功したとしても、宇宙だっていつか終わるんです。どんな偉大な作品だって、美少女ゲームでいえば『月姫』とか『CLANNAD』とか『サクラノ詩』とかも、確実に跡形もなく消えるんです。その虚無と向かい合って、虚無をぶっ倒すために四季シリーズを書いてきた気がします。『ふゆから、くるる。』もそうです。なめんな!! 死ぬまで生きるぞ!! という決意表明です。
▲こちらはシリーズ2作目の『なつくもゆるる』。萌えゲーアワードのシナリオ金賞も受賞した名作だ
最近の渡辺僚一氏の活動は?
──この1年はコロナで色々と環境が変わっています。渡辺先生は活動において何か変化したことはありますか?
渡辺:去年は謎の体調の悪化があったので毎日ジョギングをしたり、体を動かすようにしてます。ストレス解消にもなりますね。走るって気持ちいいぜ!! 埼玉県飯能という、『ヤマノススメ』の舞台にもなったド田舎に住んでるので人混みとは無縁です。都会に住んでいる人よりはコロナでのストレスは少ないかもですね。
──なるほど。外出自粛ということもありますが、最近気に入っている映画やドラマ、小説・漫画などはありますか?
渡辺:最近気に入っているのは、普通の答えですけど『呪術廻戦』。三輪ちゃんが可愛い。三輪ちゃんだけをずっと見ていたい。あと長野まゆみの小説に得るものがありそうな気がして読み直してます。同性愛と死の予感が作中に漂っていてたまらない。好き。
──今回の制作において影響を受けた作品などはありますでしょうか。
渡辺:本作を書く上で影響を受けたのは…。いろいろとあると思うんですけど科学雑誌の『日経サイエンス』から一番、影響を受けた気がします。内容は全然違いますけど矢部嵩『少女庭国』と伴名練『なめらかな世界と、その敵』にはぼんやりと影響を受けた気がします。
▲シリーズ3作目の『あきゆめくくる』のジャンルは「量子力学ラブコメディ」。SF好きなら是非プレイして欲しい逸品だ
超ボリュームのインタビューは『ふゆから、くるる。』のヒミツがまだまだ満載!!
今回ダイジェストで紹介した以外にも、ヒロイン一人一人についての紹介や、キャラクターデザインについて、今後のプロモーションやキャンペーンについてなど、渡辺僚一氏に気になる情報をたっぷり語ってもらっているぞ。“SF四季シリーズ”ファンなら絶対チェックな内容が超満載なので、絶賛発売中のBugBug6月号を購入してジックリと読み込んで欲しい!!
▲主題歌「Sacrifice」も公開中。歌うのは逢瀬アキラ氏だ
ふゆから、くるる。
シルキーズプラス
2021年9月27日発売予定
AVG、DVD/DL、18禁、Win8.1/10
通常版:10780円(税込)、スペシャリテ版:12430円(税込)、DL版:10187円(税込)
ボイス:あり、アニメ:なし
原画:あめとゆき、なのはなこひな
シナリオ:渡辺僚一
▲BugBug6月号は紙版も電子書籍版も絶賛発売中。これ以外にもスクープ特集やインタビュー企画が満載なので、こちらの記事で確認してね♪